76人が本棚に入れています
本棚に追加
後腐れなく終われたわけだし、これで、いいんだ。
職場での不倫がこじれて仕事も家庭もなくす例だって世間にはあるし、そこからすると、自分はむしろ運が良かったのだろう。
食卓の向かいの空席に目を移して、彼は息を吐く。
今日から遥子が旅行に出ているのも、幸運と言えば幸運だ。
――そんな顔してどうしたの?
妻から問い掛けられる場面を想像しつつ、誰も居ない正面を眺めていると、胸が奇妙にどきついた。
もしかすると、遥子は今まで口に出さないだけで、知っていたのではないだろうか。
最初のコメントを投稿しよう!