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起きてすぐ「妙なモノ」が視界に映り、何度も目を擦った。
前日、激務をこなした僕はリビングのソファーで朝を迎えた訳だけど。
「…何、あれ」
リビングにある鏡に「妙なモノ」が映っている。
丁度、部屋の角の所だ。
直接見ても確認出来ない。
鏡越しにしか見えないのだ。
しかも「妙なモノ」は鏡の中の部屋の四隅に置かれてあった。
置かれて?
いや、あれは物体なのか?
脳はすっかり覚醒しているし、僕の視力は1.5だ。
なのにいくら見ても「妙なモノ」の輪郭はぼんやりとしていて、まるでホログラムのようにも見える。
余りにも不可解な状況に呆然としつつ、鏡の角度を変えながらまじまじと観察してみた。
「妙なモノ」は人間のように見えた。
ぼんやりとし過ぎていて定かではないが、直立不動で甲冑のようなものを身に纏い、俯き過ぎだろって言いたくなるくらい俯いている。
顔は見えない。
ついでに足下は透けている。
四隅にいる、全部の奴がそうだ。
「ひっ」
そこで自分の置かれた状況にやっと鳥肌が立つ。
霊的なものを見るのは、これが初めてだった。
恐怖に駆られ、部屋着のままアパートを飛び出した。
「うそ、だろ…!」
見上げたカーブミラーに、僕と、「妙なモノ」が映る。
汗が噴き出した。
奴らは部屋の四隅にいたんじゃない。
四体で同じ距離を保ち、僕を囲っていたんだ。
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