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ある日突然異変が起きた。
鏡の中から彼らが消えてしまったのだ。
鏡をどこに向けても映らない。
どの鏡にも映らない。
彼らの存在を感じられなくなった僕は不安に駆られ、片時も手鏡を離さなくなった。
鏡しか見なくなった。
誰とも関わらなくなった。
衣食住が酷く不必要なものに感じられ、アパートにも戻らず、手鏡を食い入るように見つめながら街を徘徊する。
たまに映る自分の目が恐ろしく血走っていた気がするがそんなことはどうだっていい。
一、二、三、四。
どこへ行ったんだ。
何があったんだ。
一瞬でもいいから姿を見せてくれ。
お前達さえ傍にいてくれればもう何もいらないのに。
「あああ」
僕の願いが彼らに通じたのか、薄汚れた手鏡に彼らのうちの一体が映って、消えた。
「ああっ、なんで、なんで、なんで」
鏡を見ながら人混みをかき分けその姿を探した、探した、探した。
ああ、やっと見つけた。
間違いない、あれは、一、二、三、四!
僕の、一、二、三、四!
人混みを抜け、彼らを追って公園まで来た。
どういうことだろう。
鏡に映る四体の彼らは、僕の前を歩く女性に合わせて動いている。
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