第1章

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その色は…… きっと紅いと思ってた…… 「知ってるか? 周りの景色や、風、雲、空気、空の色、 太陽や地球の色んな影響を受けて、月は様々な表情を見せるんだ。 大きく見えたり小さく見えたり、色も日によって見え方が違うんだぜ」 ある中学校の昼休み。 皆が集まる中心に新一はいた。 話題豊富で容姿端麗な彼の周りには、いつも大勢の人が集まっていた。 「広大!お前全然そんな事考えた事もないだろ? 知識はないし、風情なんて絶対理解出来ないよな」 幼馴染である広大に対し、バカにした口調でこう言うと、周りの皆は大爆笑する。 普段から大人しく、無口で目立たない広大も皆に合わせ苦笑いしていた。 その日の帰り道。 「ねぇ……何で新ちゃんは皆の前で僕をバカにするの?」 広大は新一に疑問をぶつけた。 「お前、二人っきりになったら喋るんだな」 真剣な眼差しで見つめてくる広大に、新一は返答を続ける。 「別にバカにした訳じゃないさ。 ただ……お前、本当に何も知らないじゃん」 と言って笑い転げる新一。 「バカニスルナ……」 はっきりと聞き取れない広大の言葉に新一は、 「何?」 と言って耳を傾けた。 「バカにするなって言ってるんだ! 僕だって新ちゃんの知らないこといっぱい知ってるんだ!」 幼馴染の新一に対して初めて見せる表情と口調だった。 「はぁッ? じゃあ、お前が一体何を知ってるって言うんだよ!言ってみろよ!」 初めて見せる広大の反抗的な態度に新一は苛立ちを隠せなかった。 「アカイツキ……」 「はぁッ?聞こえないよ!ハッキリ言えよ!」 少し落ち着きを取り戻した広大。 「……紅い月だよ」 「それ……俺が今日学校でした話だろ! 見る場所や条件によって色や大きさが違って見え……」 広大が新一の話をとめる。 「そんな簡単に見える月の色じゃない…… 本当に真っ赤な…… 真紅の月さ」 「じゃあ、見せてみろよ!」 結果を求める新一に広大は答える。 「……わかった。 誰にも言わないって約束してくれるなら…… 今晩迎えに行くよ」 辺りは暗くなり、月が真上に輝く頃、広大は新一を迎えに行った。 「何だよ、こんな時間に……」 新一はすっかり約束の事を忘れていた。 広大は少しムッとした顔をし、 「夕方の約束、紅い月が見える場所へ今から連れて行くから」 渋々の新一を連れ出し、近所にある山の奥の方へと歩きだした。
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