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月明かりだけが照らす、暗い、暗い山道。
「どこまで行くんだよ!」
道を逸れ、獣道へと入って行く広大に機嫌悪く新一が尋ねる。
「もう少しだよ。
僕だけが知っている場所……
今までに誰にも教えたことない場所……」
道なき道を抜けると小さな池があり、その周りを木々たちが囲み、ポッカリ空いた丸い空間の上には眩しく輝く月がスッポリと納まっていた。
「綺麗だ……」
新一は思わず呟いていた。
「けど……
全然紅くないじゃないか?」
神秘的な光景のせいなのか、新一はいつもより優しい口調で批判した。
「これから魔法をかけるんだ。
まずは目を閉じて……」
新一は魔法にでもかかったかのように目を閉じた。
「今から三つ数えるから、数え終えたらユックリと目を開けて……」
静かに告げる広大に、新一は軽く頷いた。
「じゃいくよ、
3……2……1……」
新一はゆっくり目を開ける。
目に中に映ったものは、紅い月ではなく……
鋭く尖ったナイフの切っ先。
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