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「うぁぁあぁ~~っ!」
新一は必死に瞼を閉じて目を守ろうと後ろに飛び退くも、時すでに遅く、
「ウグァ……ムゥェ……グァッ……」
顔を押さえる手は真っ赤に染まり、指と指の隙間からはとめどなく紅い血が噴き出していた。
転げのたうち回る新一の髪の毛を掴み、
「よく見ろよ!」
血まみれになっている顔面を無理やり空へ向けさす。
「なっ!あっただろ、紅い月」
一緒に空を見上げ、広大は話し続ける。
「いつもいつも皆の前で馬鹿にしやがって!
僕だけしか知らない事だっていっぱいあるんだ!」
そう言ってありとあらゆる箇所を、
「もっとよく見ろよ!
わかったか!
返事しろよ!」
ナイフで突き刺した。
「ハァ……ハァ……」
興奮冷めやらぬ広大は、
ピクッピクッ
と痙攣だけを繰り返しうつ伏せになっている新一をひっぱり起こして仰向けに寝かせ、
「これならよく見えるだろ……
僕だけが知ってる場所の、僕だけしか知らない紅い月」
そう言って新一の心臓へとナイフを突き刺した。
痙攣すら止まり、ただただ紅い目で月を眺めているだけの状態になった新一をみて納得したのか、広大は道なき道を帰って行く。
「フフ……アハハ……」
獣道を抜けると、よほど痛快だったのか笑いが込み上げてきたその時、
!!!
後ろから誰かが足を掴む。
「うぁっっっ!」
驚き慌てふためいてその場でヘタれこんでしまった広大の見上げた先。
真っ赤な身体に真っ赤な顔
心臓にナイフを突き刺したままの月明かりに照らされた新一が立っていた。
「オマエハ……ヤッパリ……ダメナヤツダ……」
少しずつ近付いてくる新一から必死に逃げようとするものの、腰が抜けているため両手で地面を押しジリジリと後ろへ下がるのが精一杯だった。
「ゼンゼン……アカクナイ……」
そう言って自分で胸に刺さっているナイフを抜き去り、
「ジブンデ……タシカメロ……」
「うぁ~~~~っ!」
ホントだ……
アイツの言う通りだ……
全然紅くないや……
こうして見る月は……
真っ……黒……だ……
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