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第3話
この日の陸は、とりわけ機嫌が悪かった。
いつになく眉間には深いシワが寄せられ、何か考え事をしながら、指先で忙しなくテーブルを叩いている。
この部屋には、わたしと陸の二人しか居ない。
陸にイライラされると、わたしまで落ち着かない気分になる。
「何かあったの?」
躊躇いがちに声をかけた次の瞬間、陸の冷たい視線が突き刺さった。
「生産ラインをベトナムの工場に移すかもしれない」
「えっ?」
言われている言葉の意味が理解できず、陸の顔を凝視する。
生産ラインって、もしかして、父の会社のこと?
ベトナムの会社に仕事を任せるとなると、父の会社はどうなるの?
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