510人が本棚に入れています
本棚に追加
/38ページ
誰かがわたしの名前を呼んで、乱暴に身体を揺さぶった。
止めて。
わたしを起こさないで。
「友香っ、しっかりしろ!!」
もう、止めて。
わたしに触らないで……。
「おいっ、友香っ!!
くそっ。あ、もしもし、悪い、今から診てくれ。頼む、ああ、女が手首を切った。直ぐそっちに向かう」
手首をギュッと、タオルのようなもので巻かれた。
イヤ、離して。
抵抗しようとするけれど、身体に力が入らない。
お願い、わたしのことは放っておいて。
「……はな、して……」
重たい瞼を持ち上げると、必死の形相の陸が、わたしを抱きかかえるところだった。
最初のコメントを投稿しよう!