510人が本棚に入れています
本棚に追加
/38ページ
「目が真っ赤だな」
そう呟いた陸は、上着を着ていなかった。
きっと、わたしの血で汚れたからだろう。
言葉が見つからず俯くわたしに、陸は優しい声色で話しかける。
「傷跡は残らないそうだ」
「そう」
「顔色もマシになった」
「……」
「いろいろ誤解があるようだが、話はまた今度」
陸はそう言って、立ち上がった。
「……わたし、入院するの?」
「入院と言っても、二日ぐらいだ」
「わかった」
病室を出て行こうとした陸が、不意に足を止めてわたしを見た。
「友香」
「なに?」
陸は黒曜石のような瞳でわたしを見詰めたままで、ゆっくりと口を開いた。
最初のコメントを投稿しよう!