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薬のせいか、ぼんやりしていると直ぐに眠くなってしまう。
このまま、目が醒めなければいい。
もう二度と。
うつらうつらした意識の中、ふと人の気配で目が醒めた。
病室には似つかわしくない甘い花の香りが鼻をつく。
反射的に顔を歪めると、視界の先に優雅に微笑む女性が見えた。
「こんにちは」
「……」
目が合うと、ヒールをカツカツと鳴らしながら、わたしに近付いてくる。
陸の婚約者は、両手に真っ赤なバラの花束を持っていた。
その深紅のバラは、血を連想させる。
一体、何のつもりなの。
嫌がらせにもいい加減にして。
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