第4話

30/38
前へ
/38ページ
次へ
   血相を変えた陸が病室に入ってきたのは、それから数時間後のことだった。 「友香」 乱暴にわたしの肩を掴んで揺り起こすと、陸はわたしを抱き上げようとする。 「陸?」 「マンションに戻るんだ」 「え?」 「彩夏がここに来たと聞いた」 「……」 「悪かった」 陸はわたしを横抱きにすると、そのまま病室から連れ出した。 抵抗するのも面倒で、陸に身体を預けるようにその首に腕を回す。 もうどうでもよかった。 わたしを傷つける人は、陸だけでいい。 落とされないように陸にしがみ付くと、その身体が驚いたようにビクリと震えた。
/38ページ

最初のコメントを投稿しよう!

510人が本棚に入れています
本棚に追加