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「早く連れていって……」
誰もいないところに。
わたしを抱きかかえる陸の体温を感じながら瞼を閉じる。
不思議だった。
憎んでいるはずの陸の腕に抱かれて安心するなんて。
それだけ心が疲弊しているのかもしれない。
そう理由付けて、考えることを放棄した。
「友香」
「なに?」
「……いや、何でもない」
戸惑うような陸の声に気付かないフリをする。
陸が誰を愛して、何を望んでいようとわたしには関係ない。
今だけでいい。
ただ、ゆっくり眠らせて。
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