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わたしは呼吸をすることも忘れて、目の前の二人を見詰めていた。
無声映画のようなモノクロの世界。
わたしには、もう何も聞こえない。
陸がにじり寄る愛莉の肩をやんわりと押さえた。
それから、何か説き伏せるように言葉を紡ぎ出している。
何も聞こえない。理解出来ない。
水の中にいるように、息が苦しくて仕方がない。
呼吸が上手く出来なくて、肩が小刻みに震えた。
苦しくて涙が滲む。
そして、歪んだ視界の先に見えたものは……。
愛莉の上半身はだけた姿と、その手首を掴んでいる陸だった。
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