第4話

6/38

510人が本棚に入れています
本棚に追加
/38ページ
   わたしは呼吸をすることも忘れて、目の前の二人を見詰めていた。 無声映画のようなモノクロの世界。 わたしには、もう何も聞こえない。 陸がにじり寄る愛莉の肩をやんわりと押さえた。 それから、何か説き伏せるように言葉を紡ぎ出している。 何も聞こえない。理解出来ない。 水の中にいるように、息が苦しくて仕方がない。 呼吸が上手く出来なくて、肩が小刻みに震えた。 苦しくて涙が滲む。 そして、歪んだ視界の先に見えたものは……。 愛莉の上半身はだけた姿と、その手首を掴んでいる陸だった。
/38ページ

最初のコメントを投稿しよう!

510人が本棚に入れています
本棚に追加