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視線を久保さんに戻すと、緊張から顔が強張ってしまう。
そんなわたしを見て、久保さんは小さく溜め息を吐いた。
「昼も夜も、アルバイトしているんだね」
「……調べたんですか?」
「僕じゃなくて、彩夏がね」
「……」
やっぱり、見張られているんだ……。
わかっていても、言葉にされるとゾッとして背筋が寒くなる。
「でも、心配しなくても大丈夫。今は、陸が彩夏を上手くコントロールしているようだし……」
「え?」
コントロール?
ジッと見詰めると、久保さんがわたしの疑問に答えるように口を開いた。
「今日もデートだと、嬉しそうに彩夏からメールが届いたよ」
「……そう、ですか」
何故だか、胸がチクリと痛んだ。それに気付かないフリをして俯いた。
「可愛いね。そんな傷ついた顔をして」
違うと言いかけて口を噤む。
久保さんがオーダーした料理が届いたからだ。
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