第6話

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   久保さんの目の前で、鉄板の上のハンバーグがユラユラと湯気を上げている。 見ているだけで、胸焼けしてしまいそうだ。 そんなわたしを気にする様子も無く、久保さんは「いただきます」と手を合わせて、美味しそうに平らげていく。 「たまに食べると、ファミレスの料理も美味しく感じるよ」 「…………」 「本当に何も食べなくて大丈夫?」 「はい。いつもこの時間は食べないので」 「ああ、そう」と相槌を打つと、久保さんは無駄のない所作で料理を口に運んでいく。 あっという間に完食してしまった。 「ごちそうさまでした」 「……痩せているのに、よく食べるんですね」 「驚いた?」 「まぁ、そうですね」 「普段、食事を忘れるような生活を送っているからね。食べられる時に食べておかないと……」
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