第6話

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      バスから降りて、見慣れた街を歩いていく。 ここに訪れるのは、いつ以来だろう。 あの角を曲がれば、見えてくる建物。 何事もなければ、父の会社がそこにあるはずだ。 ずっと、気がかりだった。 実家が無くなってしまった今、もしかすると会社も倒産したのではないかと心配だった。 怖かった。 現実を目の当りにすることが。 自分がしてきたことが無駄だったと、思いたくなかったのだ。 不安で押し潰されそうになる胸を押さえて角を曲がる。 わたしの視界に映ったのは……。 記憶の中と同じ景色。 社名もそのままに、会社はそこに存在していた。
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