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第7話
リズミカルに指先を机に叩きつけながら、わたしを見据えるとニコリと微笑む。
きっと、久保さんのクセなのだろう。
その音を少し耳障りに感じながら、椅子に腰掛ける。
「突然、すみません」
「連絡は来るだろうと思っていたけど、直接病院に訪ねてくるとは想定外だったよ」
「ごめんなさい。携帯を持ってなくて……」
携帯は陸に奪われていた。
忘れているのか処分したのか、陸が何も言わないということは、もう手元に残っていないのだろう。
そして、わたしも。
わずかながらも想い出が詰った数少ない持ち物なのに、その存在すら忘れてしまっていた。
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