第1章

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 俺は、芸能人で。  引っ張り凧ではないが、そこそこ画面に出させてもらってる。  バラエティーの賑わし、地方グルメコメンテーター。レギュラー番組などはない。  画面を探せば、中央から隅の方に居られる程度の存在。  多分俺は、「喋れば喧しい」芸人だからだ。  ウザがられ、嫌われている自覚もある。  だから“言われなき侮辱”も、それなりに慣れていた。  自覚と言えば。  こちらはあまり自覚はないが、案外小心なのかもしれない。  人への気遣いは欠かせないし、何かする時、決める時、動かなくてはならない時。  どうしても万が一の、最悪な事態の可能性を、考えから外せない。だから財布にはいつも、最低10万は入れてある。突然の慰労(飲み)会や祝儀、訃報、何らかの有事に即対応出来る様に。  慎重で臆病になっているとも思える。マネージャー兼の嫁には、神仏両方の水式と、祝儀袋は用意させている。万端にしておかねば、安心できないのだ。
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