712人が本棚に入れています
本棚に追加
彼の言葉を疑った。
それは今までの過去の嘘の積み重なりのせいだ。
だけれど、心のどこかで、優斗とみどりちゃんの関係を
否定できない自分がいた。
彼もまた、みどりちゃんに惹かれていたとしたら?
過去の過ちがあったとしたら?
「みどりは、イギリスにとどまるそうだ。
この意味君ならわかるよね?
よく考えたほうがいいよ。君と小栗君との関係。
今だったら引き返せる。
僕と同じような過ちを犯す前に引き戻したほうがいい」
私への忠告の言葉を残し、
阿部さんは、部屋を出ていった。
閉じられた扉に向かい彼のおいた合鍵を投げつけた。
玄関先のコンクリートの上を鉄が跳ねる音が鈍く響いた。
彼は、ただおせっかいな忠告をしに来たわけではない。
きっと私と彼の仲を引き裂きに来たのだ。
自分の手に入れられない代わりに、私の幸せを壊しに来たんだ。
最初のコメントを投稿しよう!