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「どうしたの舞?雪まみれ!」
ドアを開けたレーナの声が一気に驚きへと変わる。
書類を束ねたバインダーを
玄関にあるシューズボックスの上へと置いて慌てて私の顔を覗き込んだ。
頭の上や肩に積もった雪を彼女がはたき落してくれた。
落ちた雪が白い地面の上で溶けて、水たまりをつくってゆく。
たぶん私は、ここ数年の間の中でも、最悪な顔をしているだろう。
そしてきっと、
以前この部屋にやってきたなっちゃんを
出迎えたときと同じ顔をレーナはしている。
そして私もなっちゃんと同じく、
雪の中を歩いてきたせいで、身体を濡らしていた。
「レーナに相談に乗って欲しいことあるんだけど」
「もちろん聞くわよ。さあ上がって」
レーナが出した綿あめのように柔らかなスリッパに足先をつっかけていると、
木目の廊下をヒタリヒタリと音を立てて足音が近づくのに気づいた。
「玲那、どうした?」
という声がして、ブラウンのタオルを腰に巻いた男が廊下へと顔を出した。
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