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壁に追い詰められた私は、目の前にいる男を脅えながら見つめた。
まるで罠を仕掛けた檻の中で、いつ食べられるのか待つ兎になった気分だ。
その手が触れる瞬間が近づく。
「不用心だね。合いカギ隠す場所を、未だに変えてないなんて」
私の前でひらひらとスティールの鍵を見せつけた。
小さな銀色が彼の指先につままれて揺れている。
小栗と一緒に過ごしていた時に、行き違いになることも含め、
念のため置いておいた合鍵。
ずっと、合鍵を隠す場所を、変えなかったことを悔やんだ。
「いらないの?」
掌に乗せた鍵を私の目の前へと差し出した。
一向に手を伸ばそうとしないから痺れを切らしたように、彼は口を開く。
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