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「いや~絶景かな。絶景かな」
その日は俺や数名の男子生徒がテニス部のコート外にある草陰でユニフォーム姿の女子部員のパンチラをこっそり拝んでいた。
「至福の時だ~」
俺の隣にいるクラスメイトの山中孝二もにやけながらパンチラを拝んでいる。
周りを見ると俺らのような輩がそこここに隠れていて、これだけ人数がいるとバレバレなのだが一向に注意されそうもないのでちゃっかり覗き続けていた。
しばらくすると、女子部員たちが練習の手を止めて一ヶ所に集まり騒がしくなった。
それも英雄に対するような黄色い声があがっている。
「……何だ?」
「……さぁ?」
そして、その中心から一人のロングヘアで見た目は結構可愛いが、つり上がった眉と目が勝気そうな印象を与える女子生徒が現れた。
ユニフォームを着ておらず制服のままなのから察するに、女子部員たちの知り合いか何かだろう。
そう思ったのも束の間……
「なあ、孝二。もしかしなくてもアレって……」
俺や孝二、他の覗きをしていた男子生徒たちも一様にその女子生徒を見て固まった。
理由は簡単。
その女子生徒の手に握られていた凶器が目についたからだ。
凶器――ただのバットではなく、釘バット。
まさにアレは、木製のバットに幾本もの釘が打ちつけられた正真正銘の釘バット。
あんなもので頭をノックされでもしたら流血沙汰だ。
「……竜郎、俺は今生命の危機を感じるよ」
孝二が引き攣った笑みを浮かべながら俺に話しかけてきた。俺や他の覗きをしていた男子生徒たちも、我が身に迫る危機をひしひしと感じ取っていた。
その間にも凶器を携えた女子生徒は少しずつ少しずつ俺たちに近付いてきている。
「……に、逃げろ!」
誰かが叫んだのと同時に俺たちは一斉に脱兎の如く走り出した。ちらっと振り返ると、あの釘バットを持った女子生徒も追っかけて来ている。
「待ちやがれ、このスケベ共ーッ!!」
凶器である釘バットを振り回して……
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