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その指先の温度を、もうすぐ感じられなくなる。
愛おしくて、そして離れたくないこの手に触れることも、もうないんだ。
別れたくない。
離れたくないと、泣きすがる。
そんなことが出来る女になりたかった。
『日皇のように抜き差しならない関係じゃない。
手を引きたい時に手を引く。
その手を引く側が、GE社だったってだけよ』
そんなレーナの言葉を思い出した。
一緒だ。
私たちは、手を取り合い、共に歩いていただけだ。
いつでもサヨナラなんてできる関係なんだ。
「サヨナラ。...舞」
彼の指からおもむろに外した指輪。
それを彼は手のひらにのせ、差し出した。
私と共にあった小さな金色のリングをそれに重ね、
私たちは、別れた。
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