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会社の屋上へといくと、先客がいた。
黒のスーツ姿の東雲リーダーは
どことなく色っぽく感じる。
風でなびく細見の黒のネクタイを
彼は直すことなく、網の外の景色を眺めたまま一人立ち止まっている。
その背中に声をかけることに戸惑った。
それは私と同じで、今日は、
そっとして欲しかったからかもしれない。
彼から離れた場所のベンチに腰掛け、朝焼けの残る空を見上げた。
ここで画面越しにキスをした日が遠く昔に感じる。
あの時の私は、リヨンとの距離を楽しんでいたのに、
いつの間にか、この距離が疎ましいものになっていた。
距離に苦しみ、距離を壊す方法を考えた。
その結果、苦しみは増幅し、私たちは壊れてしまった。
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