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普段は真っ暗にして眠る。だが余りにも怖くなり心の中で詫びながら、少しだけ灯りを点けた。それだけで気持ちが落ち着き、安心する。
それからどれ位の時間が経ったのだろう?
時折、彼が寝返りを打つ音にすら驚きながらも、いつしか眠りに落ちていった。
扉が開く。誰かが覗いている。顔は見えない。
そして、滑り込むように部屋に入ると近付いてくる。
わかっているのに、私は私を見ているだけしか出来ない。
早く逃げて……早く……早くっ!
はっと目が覚めた。
薄明るい室内。早鐘を打つ心臓が口から飛び出しそうだった。
傍らには温かい彼の背中がある。
「何だ……夢か」
安堵から呟くと、額に滲む汗を拭おうと無意識に右手を上げた。
その時……!
「夢だと思ったら大間違いだぞっ!」
地から響くような声と共に、強く強く右手を掴まれる。
視界には、ただ真っ黒な何か。
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