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「初めて見た……」
「本物……」
通りすぎた後、背後でそんな声を聞いた。感涙し、震えた声で密かな話す。
それに更に苛立ちが募った。だが、それを周囲が感じることはない。
自然と黒を纏った人物の足は更に加速した。急いで整列して頭を垂れていく人間たちには目も呉れず、ただ突き進んだ。
「黒様!」
久しぶりに聞いた声に、黒を纏った人物は足を止めた。魔力を感じるまでもなく、声の正体に予想出来た。
「黒様、お久しぶりです。お出迎え出来ず申し訳ありません」
紺のローブに身に纏った人物は高い声で恭しく息を乱しながら頭を垂れた。その態度は周囲とは違い、心から態度に現れているものだった。
紺のローブを着た人物は頭を上げて、フードの中から見える口元を嬉々に上げた。それから、周囲に殺気を向けた。
「黒様に失礼な態度を取ってただで済むとお思いにならないでください」
先ほどまでの昂った声とは裏腹に、女と分かる高い声を低くした。
彼らは平常の顔を青くし、戦慄させた。
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