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五百年後、悲劇は一人の少年に受け継がれた。
その場所は、草木が焼け焦げており、灰の匂いが拡散していた。薄暗い空に、強風が吹いていた。砂埃が舞う中、少年は地を這っていた。少年の後ろには、大きく地を削りクレーターが出来ている。
少年は所々服が無惨にも破れており、傷を身体中に作り血を流していた。血を吐きながら、少しずつ少しずつ、前へ前へと進んでいく。
目前には、森がある。
──苦しい、苦しい、苦しい。
少年の身体中を纏う多色の光の粒子は、鮮やかな色をしている。美しい色の光の粒子に見とれる者は大勢いるだろうが、対比した少年の表情は全く穏やかそうではない。
不意に突風が吹いた。同時に冷たい空気が少年を襲う。それがなぜか、心地良くかった。
「やあ、少年」
先程までなかった気配とかけられた声に驚愕し、少年は咄嗟で戦闘態勢に構えた。
だが、苦痛に足が震え、血を吐き、立つのがやっとな少年に限界はすぐに来た。少年は思わずその場に俯せで倒れた。それでも少年は目前の人物を睨みつけて威嚇した。
それに怯みもせず、目前の奴は黒いローブに身を包み、深く被ったフードから見える血色の良い唇を孤に上げる。
そして、一歩ずつ。少年へと向かって行く。
「ふぅ、ぅ゛……来るなっ!」
少年は叫んだ。
だが足を止めることない黒のローブの人物は進んでいく。そして、少年の目前に来ると、手を差し伸べた。
艶笑な口角を浮かべて、透き通るような綺麗な声で黒いローブの人物は、フードを取り払い言った。
「ねぇ、俺の子になってよ」
──そいつは、天使のように美しく、恐怖心を煽る黒い死神のようだった。
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