漆黒の元帥

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全身が黒一色。纏ったローブも、その中に見える戦闘服や手袋、そして革で出来た丈夫そうな靴でさえ。唯一別色なのは、素顔を隠す仮面だけ。滑らかな真っ白な陶器の仮面は、まるでヒトの顔を象ったように見える。 黒を纏った人物を見て極少数が顔を真っ青にさせて、焦ったように頭を深く垂れた。 彼らに見向きもせず当の本人は突き進んでいく。 極少数の地位が高い者たちが急に恭しく、または恐れたように頭を垂れる姿を見た若人たちの大半が失笑した。すると、列の最前列にいたある男が顔を上げ、真っ赤な顔で周囲に怒鳴った。 「貴様ら、何をしている! 漆黒の元帥様のお通りだぞ!」 その言葉に周囲はシーンと静まり返ってから顔を真っ青にさせた。そして、謝罪するように深く頭を垂れる。 それでも、黒を纏った人物は彼らに目は向けず。行く先、待ち構えたヒトの道の中央を進んだ。
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