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「えっと……ジョッキ9杯、それと軽食……サービスして50万円ね」
50万円? おれは耳を疑った。なんだ、そのふざけた金額は?
「おいおい、いくらなんでも高すぎだろ? 冗談はやめてくれよ」
そう言ったとたん、彼女の目付きが変わる。
「あ? おっさん、何寝ぼけてんだ? 50万つったら50万なんだよ。さっさと払え、ボケ」
そう言った彼女の声は、野太く、女性の声には聞こえなかった。
「え? その声……」
おれが驚いていると、彼女が服を脱ぎだす。そこには、女性のふくよかな体はなく、細いながらも引き締まった男の体があった。
「お前……だ、だから、何だって言うんだ。おれは絶対に払わないぞ」
そう言い終わらないうちに、男の右ストレートが顔面にヒットする。
「ごちゃごちゃ言ってんじゃねえよ。この写真をお前の会社でばらまくぞ? ああ?」
男の手には、おれの名刺と写真があった。
写真には、おれが寝ている間に撮ったのだろう、奴に抱きつきながら、服の中に手を入れているおれが写っていた。
一気に酔いが覚める。
「偽物の餌に食いついてきたお前がバカなんだよ」
そう言いながら、カツラを取って男はニヤリと笑った。
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