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「私が、アイザワ探偵事務所代表、相沢 翔です」
「よろしくお願いします」と言いながら翔は名刺を差し出す。
少女は顔を上げ、ゆっくりと両手でそれを受け取ると、まじまじと眺めた。
外は日も少し暮れはじめ、翔の背後から差し込む優しい果汁色の光が、少女のまだ少し赤い顔を照らす。
少女、という表現が似合い過ぎるほど、その容姿は幼い。
まだ垢抜けない、可愛らしい顔立ち、白い半袖のシャツブラウスに黒のフレアスカートを合わせた装い。
何かのキャラクターものらしい細身の腕時計も、顔の幼さを更に引き立てている。
明るめの茶色いボブヘアーを少し揺らすと、小さく「よろしく、お願いします」と言って頭を下げた。
少し肩の力が抜けて、ふうっと息を漏らす様子は、自身が訪れた先が間違いでなかったことの安心からだろうか。
それを見て、翔は話し始める。
「それではまず、ご用件をお伺いしてもよろしいですか?」
言ったところで、翔は目の前の少女が、さきほどから何かを気にする様子で顔をちらちらと伺っていることに気付く。
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