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「あぁ、これですか?昔から少し不自由でして。ですが、ご依頼には支障はありませんので安心してください」
翔は右目の眼帯を指差しながら、出来るだけ優しく笑顔でそう言った。
こうした対応には慣れていた。
普段はものもらいだと言うのだが、依頼人によっては付き合いが長くなることもあるので、不自由なのだと説明することにしている。
昔は距離感が掴めず苦労したが、人間の身体はそんな不利にも順応していくように出来ているものだ。
少女は驚いた表情で、両手を顔の前に突き出しこれでもかと左右に振った。
「い、いえっ!そういうつもりじゃなくてっ!」
自分の視線が失礼に当たってしまったと思っているのだろう。
「それに、私、依頼をしに来たわけではなくて.....」
依頼人ではないという。
では何故こんな所へ来たのか、翔は続きを促す。
「依頼ではない?えっと、じゃあ何故ここへ?」
翔の丁寧語が少し砕ける。
少女が醸し出す雰囲気によってなのか、どこか迷子の対応のようになってしまう。
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