『邂逅』

3/7
前へ
/31ページ
次へ
肩にかかる真っ直ぐな黒髪、そのどこか女性的な魅力故に、一際目を引く右目の眼帯。 隠すように伸ばされた前髪の奥で佇む眼帯が黒なのは、髪の色に合わせて目立たなくするためなのだろうか。 しかし、肌の色が透き通るような白であるため、逆に異様な存在感を放っている。 「人が足りねぇってのもあるが、最近の若い奴らは根性がねぇ。聞き込み一つとってもすぐ疲れた顔しやがる」 タバコに火をつけ、ソファーに深く寄りかかりながらため息をつく。 捜査は足だ、というような昔堅気の警察官なのだろう。 翔は笑って聞き流しながら、飲み干されたコーヒーのカップを二つ持ち、キッチンへ向かう。 入り口のドアから入った正面、パーテーションに仕切られた奥に、辻本の座る来客用の応接間。 左手側には、デスクトップ型のパソコンが置かれた大きめの作業用机とコピー複合機が鎮座している。 右手側に簡易キッチンがあり、その奥は翔の生活スペースだろうか、カーテンで仕切られている部屋は、中の様子が伺えない。 翔は「会うたびに行ってるよ、それ」と言いながら、新しいコーヒーを置き、座る。
/31ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加