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「少し、落ち着きましたか?」
「はい.....ほんと、すみません」
突然の小さな来客は、両手でお茶の入ったグラスを持ち、真っ赤な顔で俯きがちに頷いた。
ーーー。
「あっ、あの!その!あああたし、アイザワ探偵事務所さんですか!?」
ドアを開けた瞬間、自分はビルのワンフロアに入っている物的設備ですか、そう質問してきた少女に翔は戸惑った。
訪れた先の確認が先か、自己紹介が先か迷った挙句に焦ってしまったのだろう。
そう解釈した翔は、事務所の名前を言っていたし、少なくともここに用事はあるはずだと判断し、取り敢えず落ち着いてもらおうと応接間へと少女を促した。
少女は非常に緊張していたためか、何もないところで躓き、躓いた先で眼前に現れた色黒の大男に驚いて腰を抜かし、応接間までの僅か2、3メートルの距離を紆余曲折を経て移動した。
心外だ、と憤る辻本をなだめ、少女にただの先客だと説明し、お茶を出し落ち着いてもらうまで、翔は相当な時間と労力を費やした。
ーーー辻本も仕事に戻り(ここにいたのも仕事だが)、目の前でいつまでも恥ずかしそうに俯く少女もすこしは落ち着いた様子だったので、翔はようやく本題に入る。
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