第1章

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朝____制服を着た生徒達が桜並木をあるいていく。 わたしもその1人。神木 雪乃はこれから始まる生活に胸をわくわくさせていた。 希望していた公立には受からなかったが、制服が可愛くて有名な全寮制の私立桜木高等学園にギリギリで受かり、晴れて今日、入学式に向かうところだ。 満開の桜も、なんだか御祝いしてくれているようで妙に速足になる。 寮を出てすぐに桜並木があり、この桜並木の終わりに学園がある。 「なんて素敵!彼氏と学校からの帰り道ーーーふふふ」 彼氏なんて産まれてからいないが、すっかり想像の世界に引きずりこまれ、ニヤついていると、突然、ゴオッ___と突風が吹き、桜の花びらが渦を巻いて雪乃に襲いかかってきた。 「きゃあっっっ」 ドテッと風に足下をすくわれ、転んで、とゆうか、派手に尻もちをついた。 「いたたたた…もーっなんなのよ、今の……」 はた、と先を見ると、桜の木に寄りかかってる男の子と目が合った。 さらさらの栗色の髪の毛にすらりと伸びた手足。眼の色も髪の毛と同じ色で、切れ長で冷たい目が、こっちを見ていた。美形とはきっとこの人の事を言うんだな。 その暖かそうな眼の色とは裏腹に、なんだか得体の知れない恐怖を感じる眼差しに、雪乃は凍りついたように動けなかった。 すると、その美男子が「ふっ」と笑ったかと思ったら 「いちごか。ガキくせー。」 「………。え。」 その顔からは想像もつかないような言葉に暫く思考が働かなかった。 「んなっ!?」 わ、わたしの…?見られた…? 「何あいつーーーーっ!頭くる! あんなキレイな顔してる癖に感じ悪っ っ」 人生で数少ない晴れの舞台の日に最悪な奴と出会ってしまった。 頭はボサボサ、お尻は痛いし、パンツは見られるし最悪最低な始まりだった。 トイレに入って髪を直し、入学式に出たはいいものの、朝の晴れ晴れした気分は脆くも崩れ、雪乃はどんよりとした気持ちで、校長先生の話をぼんやり聞いていた。 いつの間にか入学式も終わり、席順を確認しに教室へ向かう生徒達で廊下はごったがえしていた。 (神木、かみき…。 あ、あった!) 日当たりのよい、窓際の一番後ろ。 やったあ。とテンション上がりながら席へ向かう。 教室の窓からは満開の桜並木と寮の屋根がちょこんと見え、絶景だった。
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