第1章

9/10
前へ
/10ページ
次へ
薔薇園着くと、薔薇の甘い香りが、澄んだ春の夜の空気を漂っていて、雪乃はその香りを吸い込むと、身体が軽くなったように感じた。 ふと、人の気配を感じ、暗闇に目をこらしてみると、薔薇園の先の芝生の上で上を見上げているあいつーーーー 如月 冬夜がいた。 こんな夜中に人がいると思わなかった雪乃は、冬夜が視線を感じ振り向くまで暫く見とれてしまった。 「お前、なにしてんの?」 「へ?」 「…。」 「な、に、って…。」 その瞬間、さっきまで月明かりで明るかった庭が急に陰になり、黒いモヤがかかったようになったと思ったら 頭上から、何かが降ってきた。 「え…?」 視界が悪い中、上を見上げると、蝙蝠の様な羽がつき、ざらついた青白い肌、目だけが異様に赤く光る何かが、雪乃に襲いかかろうとしているところだった。 それ は、さっき見た夢に出てきた物と同じ目をしていた。
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加