2人が本棚に入れています
本棚に追加
薔薇園着くと、薔薇の甘い香りが、澄んだ春の夜の空気を漂っていて、雪乃はその香りを吸い込むと、身体が軽くなったように感じた。
ふと、人の気配を感じ、暗闇に目をこらしてみると、薔薇園の先の芝生の上で上を見上げているあいつーーーー
如月 冬夜がいた。
こんな夜中に人がいると思わなかった雪乃は、冬夜が視線を感じ振り向くまで暫く見とれてしまった。
「お前、なにしてんの?」
「へ?」
「…。」
「な、に、って…。」
その瞬間、さっきまで月明かりで明るかった庭が急に陰になり、黒いモヤがかかったようになったと思ったら
頭上から、何かが降ってきた。
「え…?」
視界が悪い中、上を見上げると、蝙蝠の様な羽がつき、ざらついた青白い肌、目だけが異様に赤く光る何かが、雪乃に襲いかかろうとしているところだった。
それ は、さっき見た夢に出てきた物と同じ目をしていた。
最初のコメントを投稿しよう!