第1章

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「………判り、ました…」 少しの間を置き、淡々と椿は男に頷く。 男の表情が一気に明るくなる。 「よーし、話は決まった!さ、行こうか、椿ちゃん♪」 男は心底嬉しそうに言った。 そして手を椿に差し出す。 「…何で、あたしの名前…」 一体この男はどこまで自分を知っているのだろう、と椿は思った。 「気にしない気にしなーい。さ、行こう♪」 男は白を切る用に告げ、にこり、と笑う。 「…ねぇ、あの子…」 「変な子よねぇ…?」 通りすがりの人たちがボソボソと話す。 「あれ?椿ちゃんってば、もしかして人気者?」 キョロキョロと辺りを見渡しながら男は笑って首を傾げる。 「…貴方のその格好に、皆反応してるんじゃないんですか?」 椿はあくまで冷静だった。 男の格好は、何処か浮世離れしていたのだ。 「へ?俺?いやいやいや、ありえないって!」 手を横にぶんぶんと振りながら男は笑う。 「何を根拠にそんな自信…」 椿は怪訝そうにつぶやく。 「いや、だってね?俺の姿、椿ちゃんにしか見えない筈だから」 さらっと男は告げた。 「……は!?何それ!!?」 一瞬の沈黙。 椿は驚いた声を上げた。 「俺等みたいのは、救世主に選んだ人物にしか姿が見えない様になってるんだよ。だから、椿ちゃんにしか見えない、って訳♪」 軽い口調で男は言う。 「…悪ふざけもいい加減に…!」 椿は多少の怒りを持った様子で言いかける。 「…あの子、頭がおかしいのかしら?」 「そうねぇ…独りで百面相みたいな事して…」 『…まさか…この人の云ってる事、本当なの?じゃあ…あたしってば、凄く変な人に見られて…?』 周囲の声は、男が言っていることを肯定しているものだった。
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