第1章

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「椿ちゃーん?」 男は黙り込んでいる椿に首を傾げながら声をかけた。 「…っ…ちょっとこっちに来て!」 椿は慌てた様子で、男の手を掴み走り出す。 とにかく今は、ここから離れなければ、と。 「へ?ぅわっ!ちょっと、椿ちゃん!!?」 男は驚きの声を上げるが、椿はお構いなしで走った。 人気のない場所まで走ってきた二人。 椿は軽く息を乱していたが、男は平気なようだった。 「椿ちゃんってば…一体如何したのさ?」 男は状況が読めない、という感じで首を傾げていた。 「貴方の姿、他の人に見えないんでしょ?それなのにあんなに人目のある所で話してたら、あたしがおかしい人みたいじゃない!」 息を乱しながら椿は言う。 そう。 周りから見たらひとりごとを言っているだけなのだから。 「…成る程。其れで皆、椿ちゃんの事見てた訳だ?」 あぁ~、と納得したように男は頷く。 「…あー、もう…!一体あんた、何者な訳!?」 怒った様子で椿は男に問う。 「俺?俺は只の魔法使いだよ♪」 男は心底楽しそうに言った。 魔法使い、と。 「……はぁ…聞いたあたしが莫迦だったわ…」 椿には失笑しかできなかった。 今時魔女だの魔法使いだの…何を言うのだろう、この人は、と呆れていて。 「さーて、そろそろ、いこうかー♪……七色の光、路を作らん…テレポート!」 男は楽しそうに言って指を回した。 辺りを七色の光がつつむ。 「…え?ちょ…っ…!眩し…っ…!」 椿は驚き目を閉じてしまった。 同時に、意識も失ってしまって。 「…ちゃん……椿ちゃん!」 呼び起こすように男の声が響く。 「っ…?…此処、は…?」 椿は声に目を覚ました。 先ほどまでとは違う場所。 其処は今まで見たことのない場所だった。 「此処は13の支配する世界。俺等の住む世界だよ」 「13の、支配する世界…?」 男が言えば、椿は首を傾げる。 そんな世界、聞いたことがない。 「詳しい説明は後。とりあえず、部屋に案内するね?さ、こっちだよ」 「え?あ…はい…」 誘導するように男は優しく言う。 椿は頷き、立ち上がった。 先を歩く男に、ゆっくりとついていく椿。 歩きながら椿は、 『変な事に…なっちゃったな…』 と、心の中で思っていた。 一話、終了。
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