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もしかしたら、不幸の神様にでも愛されているのかもしれない。世の中の不幸が集まってきていないか、心配になってしまうじゃないか。
「ああ、透明になりたい」
夜空に向けて何度も願いを口にしていたからだろうか。俺は透明になっていた。自分でもよくわからないが、事実である。
「マジか」
願いが叶った嬉しさでジャンプすれば、透明な俺は床を突き抜けてマンションの二階から一階へと移動していた。無傷な自分に驚きながら、ヘッドフォンをつけてノリノリな見知らぬ住人の家をお宅訪問する。
たまに音痴な声で歌う相手を見つめ、放置されている朝食をもらった。小人が食べたとか、食べたのに忘れていたとか、誤解してくれるだろう。
あまり面白くもない部屋の壁を突っ切れば、すぐに外へ出られる。
適当に外をぶらぶら歩き回っても、なんの不幸にも陥らない事態に感激した。遊園地で遊びまくって、映画を満喫し、時間を潰していく。こんなに充実した日は初めてではないだろうか。
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