透明になりたくて

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「なんて、幸せなんだ!」  不幸から解放されたと幸せな気持ちに浸る俺は、ふと気付きたくない真実に思い当たった。  透明解除の仕方がわからない。  このままでは、自宅に貯蓄している食料は尽きるだろうし、買い物もできない。どこかに突撃ご飯をしてもいいが、周りから無関心どころか気付いてもらえない日々がスタートするのだ。 「ちょ、誰か! 俺のこと助けてくれ!」  冷や汗を流した俺は、助けを求めて走り出した。大声を上げても気付いてもらえず、掴もうとしたらすり抜けていく。足下を通過する犬が俺の体を突っ切る。 「ぎゃああああ!? するって、するってなったぞ!?」  食事はできたのに、生きている相手には、触れることはできないようだ。 「……俺が何をしたっていうんだ」  透明は幸せではなく、不幸なんだと絶望的な気分になってくる。どうすればいいのかわからないまま、自宅に帰宅した。 「マジか。抜けれない」  床を踏んだ瞬間に、体の半分が階下に突き抜けている。意識しなければ、落ちやすくなっているようだ。上半身は自室に存在し、下半身は階下にある不恰好な姿勢で俺は唸った。
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