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「感想は?」
彼が拍手の間から尋ねる。
「めちゃめちゃ死ぬほど恥ずかしい。
こういうことするならするって、事前に言ってよ」
「話していたら、恥ずかしがって、式に来なかっただろ?」
ぱらぱらと消えかかる拍手の波のなか、
ウエイターが無人の私の席へと近づき、テーブルの上に皿をまた一つ増やした。
「何でもお見通しなんだね」
「まあね、元彼だから」
小さくできた赤いニキビを、ぷつりと針で突かれたみたいだった。
熱を持っているそれは、ジンジンと痛む。
「ちょっと、ごめん」
私は扉を開けて外へと出た。
小栗は「あっ」と小さく声を上げたが「おぐりせんぱいいいいいい!!」
という、大野君の歓喜の悲鳴が響き、扉が静かにしまった。
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