猫の恩返し?

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「はっ……っくしゅん!」 理事長室の椅子で盛大にくしゃみをすると、秘書である月夜野が微かに不思議そうな顔で小さく振り返る。 「理事長、風邪が長引いておられますね。きちんと薬はお飲みになってらっしゃますか?」 「ああ」 まさか、死にかけの黒猫を拾ったせいで風邪を引いただなんて 月夜野が聞けば驚きに目を丸くするだろうな。 机に置いているテイッシュで鼻をかんだ後、再び書類に目を通す。 一言一句漏らす事なく目を通し、書類に判子を押して行く。 ある程度の雑務は全て月夜野が行ってくれているが、最終的な決断は理事である自分がしなければならない。 学園を回す為の資金の調達も教員の選抜も教育方針も、全て理事長の仕事だ。 それに加え学園へ寄付をしてくれる人物への接待は、 もしかしたらどの業務を差し置いても優先しなければならないかもしれない。 この学園を存続させる為にはまず、金がいる。 愛だの幸せだの。 言ってる暇はないんだよ、冬也。
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