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頭のおかしな人間には、関わらないに限る。
「悪いが俺はもう行くよ。急いでるんだ」
今日の接待は疲れた。
先ほどからジリジリと睡魔が込み上げて来ているし、帰って早く眠りたい。
男の横を通り過ぎようと足を踏み出した瞬間、
腕を強く捕まれその強さに警戒心が一気に膨れ上がる。
「…………警察を呼ぶか?」
「氷刀さん。僕は恩返しをしたいだけです」
そう言って真っ直ぐに見て来るその目は、月の光のせいだけじゃなく元々色素が薄く茶色い。
いや、金色?
不思議なその目の色を見ていると、思っていた以上に時間が過ぎてしまっている。
ほら、今も。
「僕を連れて行って、氷刀さん」
「…………」
日本人離れしているその顔付きだからか、微笑む顔はまるで猫のようだ。
吊り上がった目が、金色に揺らめく。
ペロリと舌舐めずりをする姿が、更に男を猫のように見せた。
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