猫の恩返し?

8/9
前へ
/100ページ
次へ
「家に入れて下さい」 「ダメだ」 鍵穴に鍵を差し込みながら、ジロリと男を牽制する。 家に入るだって? こいつは頭がおかしいのか? 何故会ったばかりの名前も知らないような男を、家に入れなければならない? そんな考えを読み取ったのか、男はにこりと笑顔を浮かべて俺を見る。 「僕はロイクです。飼い主にそう呼ばれていました」 「…………付き合ってられん」 ガチャリと扉を開け、そのまま中に入り閉めようとする。 このまま締め出せばきっと、諦めて自分の家に帰るだろう。 そう思った瞬間、男の手が扉をガッとつかんだ。 「ーーっおい!?」 「お邪魔します!」 閉じようとしていた扉を強引に開けられ、完全に力負けした俺はつんのめりそうな体を何とか堪えた。 この男。 身長も俺より随分と高いが、力が馬鹿みたいに強い。 呆気なく俺の領土へ侵入を果たした男が、嬉しそうに鼻歌を歌いながらキョロキョロと部屋を見渡している。 不法侵入だろう? いや、強盗か? 犯罪だぞ?
/100ページ

最初のコメントを投稿しよう!

364人が本棚に入れています
本棚に追加