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「おい、出て行け!」
「へ~、氷刀さんのお家って広い。綺麗ですね」
どんどん部屋の奥へと歩いて行く男を、とりあえず扉を閉めてから急いで追う。
「お前、これは犯罪だぞ!?許可もなしに勝手に人の家へ……!」
そこまで怒鳴った直後、男が急にこちらへ詰め寄って来る。
その素早い動きに言葉を飲み込み、警戒心から体を強張らせた瞬間いきなり両肩を掴まれた。
「っな、なに、を……!」
「氷刀さん…………」
ーーーーーー
壁へ押し付けられたまま、顔が目の前に寄せられる。
触れた唇すら強く押し付けられ、これがキスだと認識するのに少しの時間を要した。
「っん、っふ……っ、……!」
押し退けようと胸を突き返しても驚くほどビクともしないこの男は、まるで貪るように口内を蹂躙して行く。
閉じていた唇を激しいキスでこじ開けられ、入って来た舌が容赦なく中で蠢く。
「っふ、ゃめ、ん、ぐ」
後頭部を抱えられ上から覆い被さるようにキスをされると、
体全てを支配されてしまったように感じてますます身動きが取れなくなる。
「はあ……氷刀さん……可愛い……」
「っふ、ざける、なッんむ、んっ!」
舌、が。
またっ……!
気の遠くなるほどの長いキスが終わる頃、俺の体は床にペタリと沈み込んでいた。
それを支えるようにして、男の腕が腰をしっかりと抱き締めている。
紅潮した頬に、潤んだ唇。
そして、金色の目。
「氷刀さん……恩返しの他に、もう一つ伝え忘れが」
慈しむように目を柔らかく細める姿は、まるで大切なものを愛でている姿に見えて。
「助けてくれたあの日、あなたに一目惚れをしたんです。僕のものになって」
そう言って微笑む顔は。
やっぱり少しだけ、猫に見えた。
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