奇妙な同棲生活

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「氷刀さん、起きて。朝だよ?」 まどろむ意識の中で、左の耳から言葉が聞こえた気がした。 そして、その次の瞬間には自分の呼吸がどこかに飲み込まれて行く。 息、が。 でき、なっ…… 「~~~~ッ、ん!っはぁ、あ、んぅ」 舌が絡み合う音が脳を刺激し、一気に意識が覚醒した。 そして激しくキスをされていることに気付き、もがく様にしてロイクの体を押し退けようとする。 けれど、力の差は最初のキスで嫌というほど思い知っている。 「ーーーーっん、ぁ、っ……っふ……」 頭の中が逆上せ上がるほど深いキスが続き、やっと解放された頃には息も絶え絶えで目尻には涙が滲んでいた。 「氷刀さん、おはよ」 「っはぁ、はあ、はあっ……殺してやるこの化け猫」 そう言って睨むと、ロイクは嬉しそうに笑いながら立ち上がる。 「朝食出来てるよ」と最後に投げ掛けた後、弾むように部屋から出て行った。 「っ……クソ……今日もこれか……」 あの、自称・黒猫だと言い放つ小峰ロイクがウチに住み着きだしてから、すでに一週間が経とうとしていた。 全く出て行く素振りがない。 そして毎朝、先ほどのように激しく深いキスで俺を起こしに来る。 一体あいつは何なんだ? 化け猫だなんて本気で思っちゃいないが、普通の人間とは考えられない。 やる事なす事が俺の理解の範疇を超えている。 あんな摩訶不思議で奇妙な人間、例え猫だと言われてもおかしくないような気にさえなる。
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