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「氷刀さん、茹で卵よりも目玉焼きの方が好きでしょ?」
そう言って出されたランチプレートには、上手く半熟に焼きあがった目玉焼きにソーセージ、
緑色が映えるサラダとフルーツが端に添えられている。
横には焼き立てのパンとホットコーヒーが置かれていて、温かい湯気が立っていた。
「……別に好きなものも嫌いなものもない。食べられればそれでいい」
好き嫌いなんて考えたこともない。
冬也は昔から我儘を言っては祖父を困らせる事もしばしばあったが、
俺は文句一つ言わず出されたものは何でも食べた。
何故なら、文句など思い浮かばなかったから。
好きも嫌いもない。
食べ物も、人でさえ。
…………いや。
強いて言うなら、こいつは別だ。
鬱陶しい。
これが嫌いだという感情なら、俺はこいつが嫌いなんだろう。
「うーそ。氷刀さんの反応見てたら分かるよ?
茹で卵の時よりも目玉焼きの方が手を付けるの早いし、食べ終わるのも早いもん」
「好きなものは先に食べる派なんだね、氷刀さん」と言いながらエプロンを外す姿に、
不機嫌極まりない視線をあからさまに投げつけてやる。
一体俺の何を分かるっていうんだ?
適当にそんな言葉を並べて、一体何をどうしたいのか。
やっぱり、鬱陶しい。
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