数奇な運命

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「お待たせ致しました、小籠包でございます。お熱いのでお気を付け下さいませ」 個室の引き戸をノックしてから入って来た店員は、 この重い沈黙を破るかのように爽やかな声色で喋り出す。 この中華の店はそれなりに気に入っていて、何度か仕事で使ったことがある。 いつも個室でゆったりとテーブルを回しながら食べているが、よく見れば冬也はあまり食が進んでいないようだ。 それもそうか。 俺たちは決して仲が良い訳ではない。 早くに両親を亡くした俺たちは祖父に育てられた。 Love is allがモットーだった祖父の性格は、おじいちゃん子だった冬也にそのまま引き継がれたらしい。 正反対に小さな頃から現実主義者だった俺は、そんな二人の思想に全く共感出来なかった。 馬鹿馬鹿しい。 愛なんて。 脆くて移ろいやすいものに価値など全くない。 「とにかく俺は、結婚なんてしない。返すよこれは」 その言葉の最後に数枚の台紙がこちら側の机へ投げ捨てられ、冬也はサッと席を立った。 「……あんたはそれで、幸せなの?」 その言葉の意図するものが何なのか。 数秒俺の顔を見た後、冬也は振り切るように部屋を出て行ってしまった。
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