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私はストーカーでした。どうして、間違ったのかずっと考えています。幸せになりたかった。恋人と一緒に夏の思い出を話したり、二人だけの秘密を作りたかっただけなのに、
「天使みたいだって思ってたけど、そんなの間違いだった。お前は悪魔だっ!! 悪魔と契約した人の皮を被った化け物だ!!」
天国だった日々にバキリと、亀裂が入り、地獄に落とされるとはこのことかもしれません。
「どこで間違ったのかなぁ。いや、最初から間違いだったのかも」
私は片手を天井に向けながら呟きます。部屋は薄暗く、外の光はいっさい入ってきません。静かです。とても静かです。
「子供の頃、よく紙で指輪とか作ったっけ、楽しかったなぁー、すぐに壊れちゃったけど、ただ、私は幸せになりたかっただけなのになぁ」
『アンタのやることは、いつも他人とズレてる、どうして、みんなと同じようにできないの? 何度も教えてるでしょう? どうして、できないの?』
わかりません、どうして、他人と一緒にできないのかと聞いたときの、怒鳴りつける声が思い出しそうになり、耳をふさぎました。
頭の中にカチ、カチ、カチと時計の針が動く、あの独特の音が聞こえてきます。
「嫌だ、嫌だ。イヤ、イヤイヤイヤ、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめん。言うとおりにします。言うとおりにします。言うとおりにます」
頭をかきむしり、音を消そうともがきます、奥歯をカチカチと鳴らして耐えます。
私だってまともになれるならなりたかった。みんなと一緒になれるならなりたかった。私が何かするたびに、見下すような視線を耐える日々から抜け出したかった。否定されることが怖かった。
「私だって恋をしたいって思って何が悪いの? たとえ、叶わない恋でも、それで幸せになれるならそうしたかった」
街中で幸せそうな家族を見ているといつも思っていました。私もあんなふうに家庭や家族がいたら、幸せになれる。優しい夫に、可愛い子供がいればきっと毎日が天国に違いないのですから、長い時間をかけて思い出を積み重ねていく、日々を頭に思い浮かべるだけで、きっといつか実現できたらいいと思っていました。
「ストーカーになんて、なるつもりなかった。ただ、私は」
つーっと涙が頬をつたいます、冷たい部屋の中に小さな嗚咽が広がっていきます。いつのまにか泣き虫になってしまいました。でも、その時間ももう少しのようです。
カツカツカツと足音が聞こえ、
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