ある日、森の中、変態に出会った

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「なんでオレが…」 鬱蒼と木々が生い茂る森の中。 迷宮の森と呼ばれるそこを1人の青年が歩いていた。 彼は── 「なぁにが『勇者よお主にしかできぬのだ!』だ。あの、禿散らかした肉だるまが!」 ──勇者である。  年は17。 勇者=イケメンと言う方程式が当てはまらない中肉中背のフツメン。 鍛え抜かれた肉体もなければ豪華な装飾の施された立派な装備もない。 街中を普通に歩いていそうなGパンにTシャツ。 そこに薄汚れたローブを羽織っているだけで、こんな森の中を歩いて回る装備では決してない。 さらに言うなら、彼に手荷物は無く、腰に差さったRPGならば初めに貰えるであろう小振りな剣のみと、大型の獣が彷徨くこの森をなめ腐っているとしか思えないような装備だ。 「あ゙ぁ~、腹立つな~もう!」 青年は一人苛立ちを吐き出す。 3日だ。 青年がこの森に入ってもう3日が経つ。 その間、青年は朝露以外は口にしておらず苛立ちもピークに達しようとしている。 「どうしてオレが…」 本日だけで何度も呟かれた言葉。 「こんな事になるなら意地でも断っときゃよかったな…」 ────── ──── ──  あの日…いや、3日前の事だ。 「げぇふっ、いやぁ食った食った!相変わらずゲロマズだがな。」 オレは食器の乗った盆を返却口に入れるとそのまま近くのベッドに寝ころんだ。  ここはオレの部屋。 四方をコンクリートの壁で覆われ、窓もない。 6畳程の部屋にあるのはボロい机に、ボロいベッド。 後は異臭を放つ穴…もといぼっとん便所。 唯一の出入口は分厚い鋼鉄製の扉が1つ。 その下には先ほど使った食器等の返却口。 まぁ、出てくるときもこの穴からなのだが。 さて、ここまで言えばわかるだろ? そう、ここは独房だ。 ここに入れられてから、かれこれ一週間くらいか… 「そろそろ、飽きてきたなぁ」 そんな時だった。 「おい、出ろ。」 いきなり扉が開け放たれ1人の男が入ってきた。
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