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物干し竿に池の水に濡れた女物と男物の衣類がはためいている。
皐月らしい風に吹かれて、きっとよく乾くことだろう。
初夏のハシリは陽射しが強く、日によっては暑いくらいだが、夕暮れを過ぎるとあっという間に冷える。
池の水に全身を浸して冷えた身体には乾いた衣類に着替えても寒く、そして身体は火照る。
ちゃぶ台を挟んで、幸宏は彼女の方を向き、幸子は背を見せて壁側を向いていた。
「風が冷たくなってきたから閉めるよ」
返答はない。
幸宏はかまわず、庭側の窓を閉めた。きこきことスクリュー式の鍵を掛け、カーテンを引く。
コチコチと柱時計の音だけが室内を支配していた。
「さっきの話しの続きだけど」
幸宏は言う。
「何の話」
幸子は取り合わない。
「だから。妹の見合いの件」
「……」
「僕は妹の未来の旦那を連れて里帰りしてただけ。柊山先生には口止めをお願いしてたんだけど、案外あてにならないもんだね、先生には今さらだけど文句つけておかなくちゃ」
「……隠さなくても良かったんじゃないの」
伝わらなかった伝言を頼んだことは言い訳にすらならない。
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